五夜目のページ

五夜目 老夫婦の絆をみつめる農耕の女神
乙女座α星 『スピカ』

おじいちゃんの代理で、立川教授の田植えをお手伝いすることになった星子ちゃん。おじいちゃんに倣って、星を読んで田植えの時期を教えてあげていたようです。暦が無かった時代、日々星たちによって描かれる天球の絵図が、季節を知る手掛かりとして重要な役割を果たしていました。星子ちゃんのように古代人は、月をはじめとする天体の動きを読んで、農耕を営んでいたのです。
今回、星子ちゃんが田植えの時期を決めるのに選んだ星は、春の大三角の一つ乙女座のα星『スピカ』でした。乙女座自体は、全体的に明るさが弱い星々で構成されているため目立たず、それが恥じらう乙女のようだとも言えますが、その中で唯一の一等星、スピカが青白く澄んだ輝きを放っているので、初夏の南の空にすぐ見つけることができます。和名では「真珠星」。乙女の輝きにぴったりの名前だと思います。




乙女座のモデルには諸説あるのですが、有名なものの一つに豊穣の女神ペルセポネがいます。星子ちゃんが説明してくれているように、ペルセポネが持っている穀物の穂先がスピカにあたるので、麦穂星なんて言われることも。そのスピカと同じく「麦星」の和名を持つのが、春の大三角の一つ牛飼い座のα星アークトゥルス。むぎ色に輝く一等星は、スピカを追いかけるように麦の収穫時期に現れます。同時期に二つの星はそろって南中しますが、視等級-0.05のアークトゥルスが天頂に堂々と輝くのに対し、スピカは約45°と低い位置に上がり、視等級も0.97と控え目です。そのような姿を見て、昔の人たちは、前者を”男星”、後者を”女星”と呼び、仲の良い夫婦星として親しんできたのでしょう。



現役時代を支えてくれた奥様に先立たれた立川教授。教授は二人の歴史を二つの星になぞらえて、在りし日の想い出とともに握り飯を噛みしめるのでした。
星たちの運命は、未来へと繋がっています。アークトゥルスは大きな固有運動を持っていて、そのため天球上では、アークトゥルスが秒速140kmで乙女座に近づいているそうです。物凄い早さでも相当な距離なので、肉眼では確認できませんが、およそ50000年後スピカの横には寄り添うようにアークトゥルスが並んでいるとのこと。長い年月を経て寄り添う夫婦星。かなりロマンティックですよね。スケールが違いすぎるのですが、こんなエピソードに、人は人生を重ねてしまうものです。



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