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二夜目 庭師を再起させた、天空の柘榴
ケフェウス座μ星 『ガーネットスター』

山に柘榴の実が成るころ、北天には宵のうちからカシオペア座に並んでケフェウス座が見えてきます。ケフェウス座はγ星を頂点に、β星、α星、ζ星、ι星と5つの星を順に結ぶと、北極星に向けて先が尖った五角形になります。形からは人の姿を想像できないのですが、この星座は古代エチオピア王のケフェウスがモデルです。このケフェウスは隣の妻(カシオペア)やその隣の娘(アンドロメダ)に比べてあまり目立たないですが、実は有名な星を2つ持っています。一つは変光星のδ星。末期の星自体が膨張と収縮を繰り返しながら規則正しく変光する現象をケフェイドと呼ぶように変光星の元祖のような星です。そしてもう一つがμ星、通称ガーネットスター(柘榴石の星)です。太陽のおよそ1500倍もの大きさで重く赤いその星は、イギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルによって、柘榴の実のような深紅の宝石『ガーネット』と称されます。




今回の主人公、竹内さんは柘榴の木を自慢とする熟練の庭師さん。体調がすぐれない上に後を継がない一人息子とひと悶着があり、少し落ち込んでいます。星子ちゃんは、竹内さんを赤き巨星になぞらえて、深紅の輝きは多くの人に勇気を与えてきたと励まします。夢をあきらめ家族の光となるべく懸命に庭師として奮闘してきた竹内さんに、老星のこぼれたザクロの実のような渋みのある赤い光は、弱った心を奮起させてくれる強くて頼もしい灯りでした。 また星子ちゃんは、我々と同じように星にも終わりと始まりがあるといいます。




ガーネットスターは赤色超巨星ですから、いずれ超新星爆発をおこしてブラックホールになる運命です。自らの大爆発によって終わりを迎えて塵に還りますが、やがてはその瞬間に放出された塵が集まり、次世代の星を育んでいくのです。竹内さんは、次世代を担う息子の光は弱く小さいがゆえに、まだまだ引退はできないと決意します。自分の進む道を照らし続けるのは、思いの強さ。人も星も輝き続けていれば、いつか誰かに届くことでしょう。

ハーシェルがガーネットスターと呼んだ深紅の星は五角形の底辺(α星とζ星とを結んだ線)から南側に少し外れた位置にあります。4等星ほどの明るさなので、肉眼で観察するのはむずかしいですが、天候が良ければ望遠鏡はもちろん双眼鏡でもそのひときわ赤く輝く星を確認することができます。秋の夜空に一粒こぼれた柘榴の実。ぜひ見つけてみてください。

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